ようこそコガタナラボへ。フクイです。
皆さんは木の種類をどれくらい知っていますか?
当然のことながら「木」という木はありません。
「木」には必ず何かしらの名称がついています。
そして、小刀を初めて使うときには「何の木を削るのか」という樹種の選択が欠かせません。
児童が小刀を初めて使用する際に適切な樹種を選ばないと、児童が小刀に慣れ親しむことができなくなります。
扱う材木が適切でないと小刀の刃を欠けさせてしまうだけでなく、怪我の危険性が跳ね上がるでしょう。
「木だったらどれも同じなんじゃないの?」
と考えていた人は、この記事が小刀の指導に役立つこと間違いなし!
木は種類によって削りやすさが全く違います。全く違うのです。(2回言います笑)
僕にはこれまで木を素材とした造形作品を発表したり、その他様々な種類の木を取り扱ってきた豊富な経験があります。
そして小刀の指導も学生など1000人以上の人にしてきました。
今回はその経験から小刀初心者を指導する際におすすめする樹種や木材の基本的な知識についてご紹介。
それではいってみましょう〜
図工の指導に役立つ木の知識
「木」という木はないと上述しました。
木にも様々な種類があります。
ただ、学名や商品名、産地に基づく名前など色々な呼び名があるのでややこしい。
なので本記事は図工で役立つことが前提なので、難しく考えずに一般的な名称を用いることにします。
スギとかヒノキとかですね。
何故、木の種類が大切かというと、木によって「硬い/軟らかい/重い/軽い/強い/弱い」などの性質が大きく異なるからです。
材木の「硬い」と「軟らかい」とは
図工で取り扱う材木は、初めての小刀でも削りやすいものであることが肝要です。
それは、図工では児童が道具に慣れ親しむことが大切だからです。
じゃあ、その「硬い・軟らかい」とは何か。
専門的なことを省いて大まかにいうと、木の「密度」によるといえます。
密度が高い=硬くて重い。
密度が低い=軟らかくて軽い
と憶えておくとよいでしょう。
これは内部の水分量が同じであるなら、という条件つきですが。
木材について詳しい方からすればかなり大雑把な言い方ですが、図工で取り扱う分にはこの程度でいいと思います。
なので、初めて取り扱う木の硬さを判別するなら、重さをひとつの目安にしましょう。
また、実際に触れると体感として硬さを感じることができる場合もあります。
機会があるなら触れてみることもおすすめします。
ちなみに、世界最軽量の木は「バルサ」です。
このバルサ材は、近年では図工の教材カタログでもよく見かけます。
ちなみに『新日本造形 図工・美術教材カタログ2022年度版』でも扱われています。
実際に持ち上げてみると、発泡スチロールのような軽さにビックリします。
その他、日本の軟らかい木といえば「桐(キリ)」が有名ですね。
では、初めて小刀を使うときには軽くて軟らかいバルサや桐といった材を選べば良い・・・
という訳でもないんです(^_^;)
軟らか過ぎる木を刃物で削ると、毛羽が立って切り口がモサモサしてしまいます。
発泡スチロールを削る感覚に近いかな。
日本では桐ダンスはじめとした桐の家具が有名ですが、これは軟らかい木をスパッと適切に加工できる高度な技術を持った職人だからこそつくることが可能なのです。
なので、初めて小刀を使う際には、硬すぎず軟らかすぎない樹種を選ばないといけません。
小刀初心者におすすめする樹種7選
そこで、小刀の指導で取り扱う樹種でフクイのおすすめは次の通りです。
ヒノキ (ヒノキ科ヒノキ属)
アカマツ (マツ科マツ属)
クロマツ (マツ科マツ属)
エゾマツ (マツ科トウヒ属)
ホワイトパイン (マツ科マツ属)
ベニマツ (マツ科マツ属)
シナノキ (シナノキ科シナノキ属)
これらは、実際に僕が使ってみて硬すぎず軟らかすぎない適度な材質だと判断した材木です。
そして、身近にあるホームセンターなどで手に入れることもできます。
もちろん、ホームセンターによって取り扱う樹種は違うので、上記の材木を取り扱っていないところもありますが・・・
取り扱う樹種で迷った場合は、上記の中から選んでおけば大きな問題はないでしょう。
そして、ここで樹種をみていくと、ヒノキ以外はほとんどマツ科の木ですね。
「なんだマツという名がついている木であれば何でもいいのか」
と、判断するのは早計です。
「マツ」の名を冠していても選んではいけないNGマツがあるのです。
それが「ベイマツ(米松)」です。
これは正確には「ベイマツ(マツ科トガサワラ属)」となります。
アカマツなどのマツ類とは別の類の材種で、日本で相当するものは木材として知名度は低いが、トガサワラである。したがって、アメリカトガサワラと呼ぶべきだろう。
須藤 彰司 著『カラーで見る世界の木材200種』、p.135より
マツの名を冠していてもこれはマツにはない重厚さを持ち合わせており、マツ類の木とは別物と考えるべきものとなります。
何を隠そう、僕も過去にこれで失敗しているのです。
過去に高校で美術の非常勤講師をしていた際に使ったのですが、コレが硬くて硬くて大苦戦しました。
あのときの生徒の皆さん、ごめんね。笑
なので、マツはマツでも「ベイマツ」を小刀初心者の指導で使わないようにしましょう。
※ちなみに「ベイマツ」は材としては優秀です。飽くまで図工での小刀の指導に向いていないということです。
購入する材木を選ぶ2つのポイント
さて、樹種を決めさえすればそれで終わり、というものでもないのです。
上記におすすめに名を連ねる木でも、「全く同じ」木というものはありません。
育った環境(日の当たり方、土、気候など)によって木目や水分量など材木としての状態が異なってきます。
時には同じ樹種と混乱するくらいに違いがあります。
とはいえ、同じ樹種の中から違いを把握するにはある程度の経験が必要となります。
そこで、最低限このような材木は避けたほうがよいと視覚的に判断できる2つのポイントを押さえておきましょう。
それは「節」のある材と「芯」のある材です。
「節」の周辺は削りにくい
写真にあるような黒い模様を「節(ふし)」と言います。
節は木が成長する際に、枝が生えてくるところです。
この節はそれ自体が硬くてまわりと一体化しているもの(上記写真左側)と、ポロッととれてしまって大きな穴が開いてしまうもの(上記写真右側)があります。
節の硬さは小刀初心者が削るには難しいということと、硬すぎるが故に割れやすくなっています。
また、節の前後は木目が入り乱れていて削りにくいということも理由のひとつです。
模様としては面白いのですが、小刀初心者には避けるべきものといえます。
「芯」のある木は割れやすい
簡単に言えば、年輪の中心部分です。
この芯は写真のように丸太状のものだけでなく、ホームセンターにある角材などにも含まれていることがあります。
DIY界隈でもよく使われる2×4(ツーバイフォー)材でも見かけますね。
この芯があると乾燥などによって材が割れてしまいます。
購入する際には割れていなくても、乾燥が進むと割れていくことが予想されます。
せっかく作品をつくっても割れてきたらショックですよね。
図工の材料として「芯」のある材は避けるべきでしょう。
指導に役立つ【順目(ならいめ)】と【逆目(さかめ)】
木材には部位や木目について色々な名称がついています。
木口や辺材、板目や柾目などがそうですね。
図工で取り扱う際にはこのような名称を憶える必要はありません。
しかし、「順目(ならいめ)」と「逆目(さかめ)」だけは別です。
これを知っておくだけで、格段に木を削りやすくなります。
簡単に言えば、木を削りやすい方向が「順目」、削りにくい方向が「逆目」です。
なので、木は「順目」で削るのがよいと言われます。
猫の背中に例えるとわかりやすいでしょう。
猫を撫でるときに頭から尻尾のほうに手を動かす。
これが「順目」の向きです。
毛並みも揃ってきれいになります。
そして癒やされます。
逆に、尻尾のほうから頭にかけて撫でようとすると手が毛に埋もれていって、毛並みを乱れてしまいます。
猫も嫌がります。
でも癒やされます。
この猫の毛と撫でる手の関係は木材と小刀にもあてはまります。
猫の毛を木材に、撫でる手を小刀に置き換えてみてください。
逆目で木材を削ると、小刀が木にくい込んでいって、削り跡がモサモサして美しくなりません。
ヒノキなどのそこまで硬くない材木であれば最悪割れてしまうこともあります。
「節」の周辺はこの順目と逆目がややこしく削りにくいので避けたほうがよいのです。
逆目の攻略方法
なので、木を削っていてきれいに削れないな〜というときは、逆目になっているので、木を持ち替えて順目で削るようにするときれいに削ることができます。
さっきまで削っていた方向と逆の方向から削るようにするだけです。
削る方向を逆にするだけでキレイに削れるようになるので、児童・生徒にも「順目」と「逆目」は伝えておくことをおすすめします。
まとめ
いかがだったでしょうか。
児童が小刀に慣れ親しむためには、「何を削るか」という選択を指導する教員は考える必要があります。
とはいえ、どんな木が小刀に適しているのかなんてわからなくて当たり前。
個人的な趣味で木をつかって何かつくっているという人くらいでしょうか。
そして、木に関する知識といっても何をどこからどこまで調べればいいのか見当もつきませんよね(^_^;)
なので、ここで記載していることの中から、授業に役立つなと思うことを抽出していけばよいと思います。
あとはご近所にあるホームセンターにはおすすめの木材が販売されていることを祈るばかりです笑
今回はここまで。
参考資料は下記の通りです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【参考資料】
・佐道 健、『木がわかる 知っておきたい木材の知識』、2001、学芸出版社
・須藤 彰司、『カラーで見る世界の木材200種』、1999、産調出版株式会社
・西川 栄明、『種類・特徴から材質・用途までわかる 樹木と木材の図鑑—日本の有用種101』、2016、創元社
・順目と逆目
http://neco-sara.com/2020/04/22/naraime-sakame/
・芯材と辺材
https://www.handsman.co.jp/DMC_DIY/myweb/D01-2.html
・北米産ホワイトパイン
https://axisplan.com/lumber/white-pine/
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