4.【図工】小刀の指導で徹底すべき1つのこと

ようこそコガタナラボへ。フクイです。

これまで図工で使うオススメの小刀小刀を使うときの樹種、図工で小刀を使う理由などを取り上げてきました。

今回は小刀使用の指導方法について解説します。 

小刀は使用方法を誤ると怪我につながりやすい道具です。

とはいってもそんなに難しいことではありません。

小刀初心者への指導の際に徹底してほしいことはたった1つ。

それは「両手で使う」ということです。

小刀を「利き手」のみで使うのではなく、「非利き手」を有効に活用する。

これだけで小刀の怪我の危険が大幅に減少します。

両手で使うというのはこんな感じですね。

僕は右利きなので右手で小刀を持って、左手の親指で小刀を押し出して使います。

これが基本のフォームです。

左利きの場合は、左手で小刀を持つことになります。

図工の授業で初めて小刀を使う児童にはまずは両手で小刀を使うことを徹底させる。

大切なのはこれだけ。

それではその理由を解説していきましょう〜

目次

小刀を片手で使用することの危険性

まずは、小刀を片手で使うとどうなるのか、ということに触れておきましょう。

教科書には小刀を片手で使っている場面が記載されています。

左:開隆堂出版『図画工作3・4下 力を合わせて』/右:日本文教出版『ためしたよ 見つけたよ 図画工作3・4上』

ブッシュクラフトなどのYouTubeでもそういう場面をみかけます。

「教科書とかYouTubeでそう教えてんやったらええやん」

確かにそうなんです。

教科書やYouTubeなどで伝えられていることが間違いではありません。

上記のいずれも小刀の進行方向に身体を置かず、安全な姿勢を確保した上で使用しているので、これも「正しい」使い方のひとつです。

しかし、小刀初心者に限っては違います。

いかなる場合でも小刀を片手で使用させないことが大切だと考えています。

つまり、片手で使うのは両手で使えてから。

片手は小刀を十分に使える人がする応用編と捉えてください。

なので僕が指導する場合、図工で児童たちに初めて小刀を使わせるときは「片手での使用を禁止」にします。

それくらい強気に出てもいいと考えています。

それは以下の理由からです。

・小刀を制御できず大きな怪我につながる
・「非利き手」を使わなくなる

それではひとつひとつみていきましょう。

小刀を制御できず大きな怪我につながる

片手で使っていると、小刀が木から離れたときに負荷がなくなって小刀がスッと抜けてしまいます。

こんな感じです。

これは大げさに見せようと盛っているわけではありません笑

どれだけゆっくり使っても、小刀が木材から離れた瞬間から10㎝くらいの間は制御できていません。

この制御できていない間に怪我をすることが多いのです。

力を入れると制御できない時間と距離も伸びます。

初めて小刀を使う児童が、「利き手」だけで小刀を使うと、木を一度にたくさん削りたくて、目一杯に力をこめるケースが多くみられます。

そして、渾身の力で木を削って小刀がスッと抜けてしまうと、力を込めている分、大きな怪我につながりやすいことは容易に想像できます。

片手で使うと小刀が制御できず怪我をしやすくなるというのは明白ですね。

片手で使うと「非利き手」を使いたくなくなる

両手で小刀を使用するということは、「非利き手」を使わなければならないということです。

当然のことながら「非利き手」は「利き手」よりも自由がききません。

なので、最初に片手(利き手のみ)で使うことを許してしまうと、普段使い慣れている「利き手」だけで削るようになり「非利き手」を使おうとしなくなるのです。

「利き手」だと力を込めて一度にたくさん削れます。

気分的にも身体的にも楽です。

そうなると、わざわざ使いにくい「非利き手」を使いたくなくなります。

小刀を初めて使うときに片手で使うことを憶えてしまったら、両手で使うことがより難しくなります。

以上の点から、小刀初心者に限っては片手で使うのは両手で使えるようになってから、ということを徹底したいのです。

一番、最初が肝心だと考えています。

「両手で使う」ことで得られる3つのメリット

両手で小刀を使うということには以下の3つのメリットがあります。

安全面の強化
「非利き手」の巧緻性向上
美しい「造形効果」

これらのメリットを簡単に解説してみましょう。

安全面の強化

すでに片手使用による危険性について述べているように、「両手で使う」ことで安全面は強化されます。

「両手で使用する」ということは、「非利き手」で小刀の動きを完全に制御するということになります。

「制御する」というのは、いついかなる時も「非利き手」が小刀から離れないということです。

特に小口(こぐち)と呼ばれるような木材の先端部分を削るときは、他の部位よりも小刀が滑りやすく、小刀が「非利き手」から離れやすくなります。

「非利き手」で小刀を制御できていれば、小口を削っていても滑ることはなく安全性が飛躍的に向上します。

もちろん、小刀を両手で使用していても、小刀の刃の進行方向に指や手などの身体を置いてしまっている場合には怪我をしてしまうことがあります。

しかし、小刀が制御できていれば大きな怪我を防ぐことができます。

従って、小刀を「両手で使う」ということで、児童の活動中の安全を確保するメリットが生まれるのです。

 「非利き手」の巧緻性

小刀を「利き手」で持って、「非利き手」の親指で小刀の刃を押し出す。

これが基本フォームです。

「利き手」は添えるだけ。

実は小刀を使用する際には、「利き手」の役割はそんなに大きいものではありません。

どちらかというと「非利き手」の使い方が重要になってきます。

「非利き手」は小刀の刃を押し出すだけでなく、削る木を固定する役割もあります。

なので、「非利き手」を使えないと、小刀を有効に使うことはできません。

最初は「非利き手」の使い方に不自由さを感じます。

しかし、使用経験を重ねていくことで、「非利き手」の動きが円滑になります。

小刀を「両手で使う」ということで「非利き手」の使用頻度が高くなり、普段使わない「非利き手」の巧緻性(器用さ)が向上していくのです。

美しい「造形効果」

「両手で使う」ということは、木を美しく削ることにもつながります。

鉋で木を削ると木材の表面に光沢が生まれます。

それは鉋の刃が木よりも圧倒的に硬い金属であるため、木材を薄く削る際に木肌の細かな繊維を均していくからです。

試しに手持ちの金属のスプーンの丸い部分で、ザラザラしていない平らな木材の表面を擦ってみてください。

そうすると擦られた部分が光沢を帯びます。

小刀で木を削る際にも同じようなことが起こります。

小刀の刃を立てずに刃裏を木に擦りつけるように使用すると、削られたところに光沢が生まれるのです。

これは特別なことでもなんでもなく、そもそも小刀が持っているポテンシャルともいえます。

このような小刀がもつ造形的な効果を引き出すには、小刀を完全な制御下におく「両手での使用」が必須となります。

小刀を片手で雑に扱っているとこのような造形効果を期待することは難しいといえるでしょう。

なので、安全性だけでなく、削り跡が美しい光沢を放つような造形効果を生み出すためにも「両手で使う」ことは重要なのです。

削りやすさを上げるための3つのポイント

小刀を両手で使うことによって、安全面の強化や「非利き手」の巧緻性の向上、美しい造形効果について紹介してきました。

ここでは、小刀による木材の削りやすさを上げるための工夫ポイントを3つ紹介しておきましょう。

逆目を避ける

まず1つめ。それは【逆目(さかめ)】を避けるということです。

木を削る際には【順目(ならいめ)】の向きで削るようにします。

【逆目】って何?という人はコチラの記事をご参照ください。

木材の部位には柾目や板目、小口などの様々な名称があります。

小学校で初めて小刀を使う場合には、このような名称を児童が憶える必要はありません。

ただ、【順目】と【逆目】だけは児童にも伝えるようにしてください。

どんな風に削っても木の表面がザラザラする、ガタガタして削りにくい、そんなときは【逆目】で削っているときです。

僕も削ってみないと【逆目】かどうかはわかりません。

削ってみて【逆目】かな?と感じたら迷わず木を持ち替えて、削る向きを【順目】にしましょう。

削る向きを逆にするだけなので簡単です。

【順目】で削るようにするだけで、削った表面が美しくなり、作業効率も圧倒的に上がります。

上から下

そして2つめは、刃の進行方向は常に【上から下】を心がけるということです。

上とか下とか「?」ですよね(^_^;)

図をご覧ください。

図のような形状の木材を削るときには図のように木材の形状に対して小刀を上から下へ動かします。

下から上へしゃくりあげるようには使用しないということです。

下から上に使うと図の黄色の木目の部分が小刀に引っかかって木が木目に沿って割れる危険があります。

割れるまでいかなくてもザラザラ・ガタガタした削り痕になります。

なので小刀は【上から下】に動かすようにしましょう。

目指すは薄く長い削りカス

小刀の使い始めは、刃を木材に立てて使ってしまいます。

木の表面に対して刃をあてる角度がきついと、力も必要になり、美しく削れず、怪我につながりやすくなります。

なので、小刀を使うときは刃をできるだけ寝かせて使います。

小刀の刃の裏を木の表面に擦りつけるようにして使うといいでしょう。

刃を立てると削りカスが細かくなり、削った表面もガタガタしがちです。

刃を寝かせて、刃の裏を木の表面に擦りつけるように使うと、削りカスが薄くなっていきます。

そして、その削りカスが薄く長くなるように意識して削ると、木の表面を美しく仕上げることができるようになります。

最初は寝かせすぎて空振りをしてしまうこともあるかもしれませんが、根気よく続けていくと刃の適切な角度や力加減を身につけていくことができるようになります。

刃の角度がどうなっているかという視点を持っていると、児童への指導にも役立つこと間違いありません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

小刀の使用は、指導者にとって怪我の不安がつきまとう怖ろしいもの、という印象もあったかと思います。

それは、小刀の指導のポイントを押さえることで多少なりとも軽減されます。

そのポイントも「両手で使う」という1つだけ。

ここさえ押さえておけば、小刀の指導はバッチリです。

児童に限らず、中学生や高校生、大学生でも初めて小刀を使うなら「両手で使う」ということを徹底してください。

これは初めが肝心です。

まずは、「非利き手」で小刀を制御できるようになる。

そうすると、小刀のポテンシャルを最大限に引き出すような削り方も身につけていくことができます。

実はワンランク上の使い方もあるのですが、その技法はまた別の機会に記事にしますね。(出し惜しみ笑)

今回はここまで。

最後までお読みいただきありがとうございました。

【参考資料】
開隆堂出版社 『力を合わせて 図画工作 3・4下』
日本文教出版株式会社 『図画工作3・4上 ためしたよ 見つけたよ』
福井一真、「工作・工芸教育における小刀の取り扱いに関する考察Ⅱ」、『大学美術教育学会誌no.45』、大学美術教育学会、2013、pp335-342

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (1件)

コメントする

目次