10.【図工】【美術】小刀使用題材「よばい棒」を徹底解説!

フクイ

ようこそコガタナラボへ。フクイカズマです。

さて、今回は「よばい棒」という題材についての解説です。

僕の授業では毎年100名以上の学生にこの題材を実施しています。

学生は人生でこんなに「よばい」という言葉を使うこともないんちゃうかなってくらい、この授業では「よばい」という言葉が飛び交っています笑

まだ、学生からは苦情が出ていないので今後も継続予定。

だって面白いからね。

活動がね。

この活動は小刀をメインにしています。

そして「つくりながら考える」造形プロセスを取り入れています。
(本プロセスについてはこちらのをご参照ください)

なので、思考的というよりは自分の感覚を重視した活動になります。

この記事では

何故「よばい棒」なのか
大学で実施している授業の詳細
「よばい棒」で得られる4つの学び

 などを解説していきます。

小刀題材を検討している方は必見です(^_^)

ちなみに、アイキャッチに使っている画像は、僕がつくった「よばい棒」たちです。

それではいってみましょう〜

目次

よばい棒とは?

よばい棒について調べると諸説あるようです。

僕はミクロネシア諸島に伝わる民具として紹介しています。

よばい棒は公序良俗違反!?

よばい棒はちょっと検索をかけるとセクシュアルな情報がわんさかと出てきます笑

ここでは言えないようなことに使用されているという情報もあります。

LINEの「AIチャットくん」でよばい棒について質問すると、

「公序良俗に反する恐れがあります。そのため当サイトでは関連情報の提供はいたしかねます。」

という回答が笑

とはいえ、ミクロネシア諸島ではコミュニケーションツールとして使われていたという説があるようで、それを採用しています。

授業では飽くまでも、文化を支えてきた民具として「よばい棒」を紹介しています。

まぁ、学生によっては勝手に検索して僕が提供する以上のいかがわしい情報をゲットしているようですが笑

授業では男性が女性を誘い出すときに使用するケースを例に説明をします。

男性が女性を誘い出すときは明かりがないため真っ暗です。

なので、女性はよばい棒の形状から誰のものかを判断するそうです。

この「触れてわかる」ということが重要なポイントとなるのです。

「触れてわかる」形にしようというのがよばい棒の活動です。

・・・よばい棒でなくてもいいじゃないか?

という声も聞こえてきそうですね。

もうその通り笑

言い訳なし!笑

別に「よばい棒」でなくていいんです。

「魔法の杖」とかね。

実際、僕も最初は「魔法の杖」という題材にしていました。

でも、とあるところで「よばい棒」を授業でつくっていると聞いて、それ僕もやりたい!ってなった笑

授業のねらいも似ていたので、その人に僕も「よばい棒」にしていいか許可を得て、今に至ります。

そうです。

ただ単に僕が「よばい棒」にしたいだけなんです笑

今や、うちのゼミ生が自分のゼミのことを卑猥ゼミだのよばいゼミとかゆうとる笑

題材名にこだわったほうがいい理由

「よばい棒」という名称にこだわっている理由はちゃんとあります。

ただ、変態なだけというわけではありません笑

「よばい棒」という名称は絶大なパンチ力を持っています。

それだけで、対象者の気をひくことができます。

つまり、興味を持ってもらえる。

図工では題材に興味を持ってもらえなければ授業が成立しない。

主体性(やる気)が湧き出てこないと学びにならないから。(去記事も参照ください)

実際には、「魔法の杖」でも「よばい棒」でもやることはほとんど同じです。

学生相手に「魔法の杖」でもいいのですが、僕はパンチ力を優先しました。
(ちなみに「魔法の杖」は最後に杖のどこかにビー玉をつけます。)

なので、実施対象によって題材名を変えます。

小学生・中学生であれば「凸凹不思議な魔法の杖」でいい。

小学校中学年くらいで2コマですますなら「凸凹不思議な鉛筆」でもいい。(鉛筆教材はコチラ

児童・生徒・学生の興味関心を高める工夫は題材名から。

これを意識しておくのも大切です。

これは余談ですが・・・

とある県で実技研修の講師依頼を受けた際、当然僕は意気揚々と「よばい棒」を実施しました。

講座名も「よばい棒をつくる」的なものにしたと思います。

しかし、当日は「小刀の楽しい世界」みたいな講座名になった笑
(もちろん事前にメールでお知らせいただき、僕も了承していましたが)

教育関係者に対してもパンチ力がありすぎたようです笑

小刀題材としての「よばい棒」を徹底解説!

よばい棒の活動で使用する道具は写真の通りです。

右からヒノキの角材(18×18×300mm)・小刀・胴付き鋸・クランプ(C型)・クランプ(L型)・万力(上部)です。

このヒノキの角材に切り込みを入れたり、小刀で削ったりしてよばい棒をつくっていきます。

例えばこんな感じで鋸で切り込みを入れます。

そして、この切り込みを小刀で削っていきます。

・・・何故か動画がスローになってしまう(^_^;)

鋸で入れた切り込みに向けて小刀で木を削っていくと、木に凸凹が生まれます。

鋸と小刀を駆使しながら、いろんな形の凸凹にチャレンジしてよばい棒をつくっていくことになります。

授業の大まかな流れは以下の通りです。

全4コマ(90分×4回)
1コマ目:樹種・鋸・クランプ・万力・小刀の使い方を説明した後、よばい棒の解説と制作。
2コマ目:鋸の種類(両刃・胴付き・糸鋸)の解説の後、よばい棒制作。
3コマ目:ヤスリ・ニス・オイルの解説(本活動では使用しない)の後、よばい棒制作。
4コマ目:終始よばい棒制作。
樹種小刀の使い方は過去記事をご参照ください。

この時間内に制作を終わらせることは難しいので、作品提出は4コマ目が終わってから1ヶ月後くらいに設定しています。

出来上がっていない人には小刀を貸し出して、自宅での作業となります。
(4コマをこなすと、怪我をする危険もグンと少なくなっています。)

本授業は後期にあるので、年をまたぎます。

学生によっては年越しよばい棒となるケースがある。

そうなると、実家の家族に何をつくっているのか説明をしなければならないこともあるようで。

気まずさMAX!!笑

僕も母親に説明したことがあるのでよくわかる笑

母「これ何?」

僕「・・・ょふぁい棒」

母「ふーん」

僕も日和ってます笑

よばい棒制作の4つのルール

よばい棒制作には以下4つのルールを設定しています。

1.設計図や下描きをしない(削りながら考える)
2.短くしない(折れないうようにつくる)
3.全面を削る(小刀で削っていないところがないように)
4.触れてわかる形にする

ではそれぞれについて解説していきましょう。

1.設計図や下描きをしない

これは「つくりながら考える」造形プロセスを促すためです。

鋸と小刀でできた凸凹から、形をイメージしていく。

球体やねじれをつくりたいというのでもかまいません。

でも全体のイメージを決めてからつくるのではありません。

いろんな形にチャレンジした結果、全体ができているというようなイメージです。

予め、全体のイメージを固定してしまうとありきたりな形にしかならない。

だから、自分の感覚に従ってつくる活動としています。

しかも、小刀を使ったことがない、あるいは使えていない学生がほとんど。

初めての小刀ではどのように木を削っていくのかイメージを持つことが難しい。

図工で道具を使う場合、道具を使いこなすというよりは、児童が道具に慣れ親しむことを重要視しています。

なので、学生にも削る感触や木を削る楽しさを味わってほしい。

最初から形を決めてしまうと、形に囚われてしまって、削る感覚に意識が向きにくくなります。

その都度できる形やその日の気分でつくることで、自分の感覚に従ってつくる経験をしてほしい。

僕によばい棒を教えてくれた方が、学生に伝えているこの言葉が好きです。

「つくった形を省みない。反省せずにどんどん形をつくっていく」

いちいち省みてたら進みませんからね。

そうすることで感覚的につくることも促される。

行き当たりばったりで思いついた形をつくっていく。

これは具体的な形をつくるな、と言っているのではありません。

球体をつくりたくなったらそうしてください。

ねじりたくなったらそうしてください。

形を作り込んでいるときは感覚的(非言語的)に捉えるよりも思考的(言語的)に考えていることが多い。

まぁ、下描きせずに自由につくれってことですね笑

2.短くしない

これは、削りすぎて折らないということでもあります。

また、「おれのよばい棒は3刀流」とかなし笑

はじめて木を削ると、どれくらい削ったら折れるのかという予測ができない。

だから、自分で削る深さや形を調整することが求められます。

適当にやると、柔らかいヒノキはすぐに折れるからね。

そして、折ってしまう人は鋸で切り込みを深く入れすぎていることが多い。

なので、切り込みの深さを常に意識するように促します。

また、できるだけ細くしたい場合は、全体をある程度削ってから、最後の仕上げで細くするようにアドバイスします。

活動を通して削る手順などの見通しをもてるようになることも大切。

折れたら最初からつくりなおしてもらうので、学生も必死です笑

3.全面を削る

これは文字通り。

削っていない箇所がないようにします。

平面にしておきたいところも薄く削る。

このルールを設定することで、あまり削らずに終わるということをなくしています。

4.触れてわかる形

よばい棒が触れることを前提としたものだということは上述の通り。

目で見える形のおもしろさだけでなく、触覚で判断できる形ということも意識してほしい。

そして、触れるとなると削り跡を滑らかにする必要が生じます。

この活動ではヤスリは使いません。

時間が確保できないというのもありますが、小刀仕上げにこだわってもらいたいから。

小刀で丁寧に削ると、鉋のような鏡面仕上げになります。

削り跡に光沢が生まれる。

この光沢をヤスリで出すのは時間がかかる。

そして小刀で丁寧に削るという意識を持って欲しい。

なので、触れることを設定することで仕上がりへの意識を促します。

仕上がりを意識することは、小刀を丁寧に使うということ。

丁寧に使う意識を持つことで、怪我もしにくくなって熟練度も上がる。

いいことだらけ笑

よばい棒制作から得られる4つの学び

よばい棒での学びは、小刀の使い方を身につけるだけではありません。

小刀を使う経験から、どのような使い方をしたら危険なのかを身をもって知ることにもなります。

経験から生まれる「危険予測」

「刃物の進行方向に身体を置かない」

夢中になればなるほど、小刀の進行方向に指があったりして「はっ」とします。

そして、これはどの刃物を使うときにも言えることです。

例外もありますが、彫刻刀を使うときや包丁を使うときにも共通する意識です。

そして、「刃物が危険」というのは、使ったことがない人には実感できません。

言葉として頭では理解できます。

でも、そこには経験がないから実感がない。

実感がないから単なる「情報」でしかない。

情報だけでは具体的な危険を予測するということ自体できません。

「そんな使い方したら危ないのはわかるでしょ?」

というのは経験のある人の言い分。

経験と実感がないと、何が危険な行為なのかがわからない。

危険であるということが意識に上がらない。

だから、「わかるでしょ?」なんて押しつけは意味がない。

しかし、小刀を実際に使用することで「危険な行為」が具体的な実感として身につきます。

実感するからこそ、危険予測という意識が芽生えて予防につながるのです。

道具や材料は使い込むことで「知識」になる

鋸や包丁などについて、どんな使い方をするのかを多くの人は「知っている」かもしれません。

でも、身体を通した経験をしないと実感が生まれない。

だからこそ、道具は実際に使うことが大切です。

使うことで「知る」ことになる。

図工の「知識及び技能」の観点では、活動の中で子ども自身が道具や材料の特性などについて実感することを重要視しています。

実感するには、使わないとわからない。

道具や材料の特性理解は、使うことを通して深まります。

だからこそ、小刀は実際に使うことが大切。

ただ使うというよりは使い込む経験が大切。

なので使い込める題材にすることが教員には求められます。

指導力の向上

使い込むことで、危険予測の精度が上がる。

危険予測の精度が上がると、危険に対するアンテナができる。

そのアンテナは自分に向けたものだけではありません。

人が使っているのをみたときに「危ない」と思えるのです。

それが指導をする際に有効になることは言うまでもありません。

このアンテナがあると、他者の危険を事前に回避させることができるようになります。

友だちが危なっかしい使い方をしているのを見たらチャンスです笑

指導の練習台になってもらいましょう笑

そして大きな怪我は男子よりも女子のほうが多い。

男子は血に弱いから案外慎重になる笑

女子の中でも特に、痛さに慣れてしまっているようなタイプは「これくらい大丈夫」ってよく言う笑

血を流しながら「大丈夫です」って言う笑

大丈夫じゃないから笑

「痛さ」や「血」に強い人ほど怪我をしやすい傾向がある。(フクイ個人の感想です)

だから「恐怖心」を持つことは大事なんです。

その「恐怖心」が怪我から自分を遠ざけてくれる。

小心者でいいんです。

それは慎重さにつながる。

そしてその慎重さは指導する際に危険を察知する優秀なアンテナになります。

ちなみに、授業では止血方法や自分の授業で怪我人が出たときの対応についても伝えています。

立体構成に対する意識の向上

学生をみていると、立体をつくるという経験が少ないのではないかと感じます。

球状の形をつくれない

例えば、よばい棒で球状の形をつくりたいと思ってもつくりかたがわからない学生がいます。

どこをどう削ったら球状になるのかをイメージできない。

授業の中では、

「球にしたいのにどんどん細くなってしまいます」

という相談をよく受けます。

これは、丸く削ろうとして円柱をつくってしまうという例です。

これはその学生の能力が低いとかそういうことではありません。

そもそも立体をつくりだす経験値が少ないから、イメージできないだけなんです。

なので、その場合は実演をして解説をする。

もしくは、球体の定義を言葉で解説します。

球体を言葉にすると「平面がない・角がない・どこから測っても同じ長さ」です。

形のイメージが浮かびにくい学生には、言葉にすると理解が深まることが多い。

一度、理解とイメージがつながるとスルスルできるようになります。

そして、もうひとつ学生に伝えていることがあります。

面と線の関係

よばい棒の形状の構成には大きく分けて以下の2つがあります。

球や立方体などの「塊」を積み重ねた構成
「面のつながり」を主軸とした構成

塊の構成は、球や四角などそれぞれ好きな形を積み重ねていくことで生み出されます。

「面のつながり」とは、ねじれさせたり、細くしたりして形の流れを意識したものです。

この「面のつながり」を意識することが最初は難しく感じるようです。

木を削ると、削ったところが新しい面として生まれます。

そして、面と面の境界には「線」がある。

この線があるから、ある面とある面が別の面であることを認識できる。

この線を曖昧にすると面もみえにくくなる。

面がとらえにくいから、形がみえにくい。

そうすると、今自分が何を削っているのかわからなくなって迷子になっちゃう。

だから、迷子の学生には線を強調することで面が見えやすくなるということを伝えます。

これは言葉だけではわからないので、実際に線を強調するように削ってみせます。

そうすると、線と面の関係に気付く学生が多い。

ここに気付けると、ねじれや螺旋なんかもつくりやすくなる。

面と面のつながりを意識すると、よばい棒全体の形どうしのつながりを意識できるようになります。

ちなみに、よばい棒での学生に人気のある形のベスト3は次の通りです。

1位:球
2位:ねじれ
3位:螺旋

※僕の主観です。

まとめ

いかがでしたか?

よばい棒をつくりたくなってきたでしょ?笑

ただの変態の戯れ言だと思っていたそこのあなた!

その通り!笑

ひわいゼミだのよばいゼミだのゼミ生に言われてもなおやめない笑

だって楽しいからね。

活動がね笑

小刀の使い方だけでなく、指導する際の危険予測も身につく。

立体の構成についての意識も向上する。

作り込みたい学生はどんどんつくり込めるし、やっぱり苦手だなと感じる学生は嫌になり過ぎないところで終えることもできる。

小刀を使うことに苦手意識を植え付けることは絶対に回避したい。

なので、この活動ではどこまで深めるかは、学生の判断に委ねています。

ちなみに、このよばい棒の活動は、愛媛大学だけでなくて、鳴門教育大学や島根大学の美術教育の学生にも実施しています。

広がれ!よばい棒の輪!笑

まぁ、教育委員会には受けが悪いかもしれませんが笑

楽しいのでめげずに続けます。

今回はここまで。

最後までお読みいただきありがとうございました。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次